重力ピエロ/伊坂幸太郎 | チャンネル83

重力ピエロ/伊坂幸太郎

伊坂 幸太郎
重力ピエロ
「本当に深刻なことは陽気に伝えるべきなんだよ」
「重いものを背負い込みながらタップを踏むように」
 
「死神の精度」の次に読んだ伊坂幸太郎作品。
もう完璧にはまった。
ヤバイです、伊坂幸太郎。
 
「遺伝子情報」を扱う会社に勤める兄の泉水と母親がレイプされたことで生まれた弟の春、
そんな半分しか血の繫がっていない兄弟が仙台で次々と起こる放火事件の謎を追って調べていく。
犯行現場とその付近にあるグラフィティアートの関係。
そして遺伝子・・・。
 
ユーモアを交えつつ次々と読ませていく文体、
徐々に明らかになる伏線の謎、
それだけでも面白い。
けれどこの作品の根底には重力にも似た重いテーマがあると思う。
正直、僕には春のやったことが悪いこととは思えなかった。
「正しくて、悪いこと」そうとしか言いようのないことだと思う。
一見ひょうひょうとしている彼、
だがその内面ではきっと自身の生のルーツに対する苦しみがあったはずだ。
だからこそあそこまで性的なものを憎むようになったとしか思えない。
彼はまさしくピエロだったんだ。
笑顔の仮面の下に苦しみを隠した、そんなピエロだったんだろう。
 
「重力」とは僕らを縛り付けるあらゆる法則や既成概念をさしている言葉だと思う。
そんなものに縛られずに行動していた春もまた、
結局は「遺伝子」というものに縛られて生きてきたんだろう。
そしてその呪縛から彼を解き放ったのは何よりも父の一言と兄・泉水の存在だったんだろう。
そういった兄弟の、そして家族の物語なんだ、これは。
 
読んだあと、何かを突き抜けたような爽快感を味わえました。
 
 
 
ちなみにこれを読み終わってから「死神の精度」の「旅路を死神」のとあるシーンをもう一度読んでみた。
伊坂作品は他作品からのゲストが出演することで有名らしい。
で、「死神の精度」を読んでこの作品に興味を持ったんだけど、
改めて読んでみて「そうか、そういうことだったのか!」とあの2人の会話シーンの重大性に驚いた。
まさかあのシーンでの彼の行為があのきっかけだったとは・・・。
詳しくは読んでご確認を。
 
あっ、どうやら「重力ピエロ」にもゲストが何名か出演している模様。
その内の1人が主人公の作品は現在読んでいる途中です。
 
 
「死神の精度」の感想はコチラ
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